『誹謗中傷』77

2011-02-07

後継者が社長になることに賛同する者をあらかじめ取締役に選んでおく。
これは会社において後継者の地位を安定させるための手段の一つです。
しかしその賛同する者を選ぶ暇もないほどのテンポで、
事が進むとどうなるでしょう。

私は伝統ある組織において、弱冠26歳で宗家を継承することになりました。
金城裕という空手の大家の後を継ぐ。
いやこれは途轍もないことなのです。
会社でいえば平取締役が何十人抜きで、抜擢されたようなものでした。
先生のシンパや取り巻きは、
私のような若造には期待もしていなかったでしょう。
共に稽古した間柄でもありませんし、私の顔も知らない幹部もいたほどです。
だから、一時も心の休まることがなく、常に針の筵に座る気持ちでした。

さらに追い打ちをかけるように、
「宗家職を数千万円で買った」
と噂されました。
私は当初、そういった誹謗中傷に多く悩まされました。

しかし私は、ただ誠実に実直に、
自分の信念のもと毅然と振る舞っていきました。

それからというもの、少しずつ、私の周りの人に変化が表れました。
私という人間を間近で見始めた人は、
徐々に、噂の人間とは違うぞと思い始めました。
何年か過ぎ、私に賛同する人が、やっと、
ちらほら現れてくれたのでした。

その後も、根も葉もない噂は残っていました。
それでも続けてこられたのは、
私を信じてくれる兄弟子や後輩がいたからでした。
金城先生が私を宗家に指名して頂いたその期待に応えよう、
その一心からでした。

建武館 篠田剛

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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