『しかみ像と悔しい肉の塊』70

2011-01-30

しかみ像という絵をご存じのことと思います。
このしかみ像という絵は、徳川家康がある負け戦で、
恐怖に震えて逃げ込んでしまった自分を戒めるために、
自らの情けない姿を描かせたものです。

私にとってのしかみ像が、
兄弟子からもらった写真だったのかもしれません。

当時の稽古はほんとに苦しいものでした。
もちろん、手を抜けば楽なのですが、
手を抜く自分がいやらしいと思えて、
いくら辛くても手を抜きませんでした。

とはいえ生身の人間ですので、稽古の途中で
“ちょっと力を抜いて突こう”と頭をよぎる瞬間があります。

そんな自分を戒めるためによく使うのが、
過去の悔しかった事件・事故の「思い起こし」です。
辛いなあと思った時に、悔しかったことをわざと思い起こすのです。

頭の中でリアルに再現されて、当時の悔しい感情がわき出てきます。
アドレナリンが分泌されて交感神経が興奮するのでしょう。
辛かったのにまるで生き返ったように元気になりました。

よく道場生に「悔しい肉のかたまり」という例え話をします。
悔しい事象を大きな肉のかたまりに例えます。
一度に食べ切るのではなく、一口大に切ってラップにくるんで、
冷凍庫に保存しておきます。

食べたいとき、つまり辛いと思ったとき、
一つ取り出してはむしゃむしゃ食べるのです。

こうやって、怠けたい気持ちがもたげた時も、
逃げずに歯を食いしばってやってきました。

そういうすべを持っている人は、
粘り強く事を成し遂げることができると思います。

しかみ像(徳川家康三方ヶ原戦役画像)

建武館 篠田剛

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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