『彼女とおおらかな母』67

2011-01-27

タワラは美容専門学校の学生でした。
いつだったか、美容学校の仲間を家に連れて来ました。
千葉の守谷海岸にもよく連れて来ていました。

その仲間の一人に女の子がいました。
この女の子が、のちに私の妻になる勝美でした。

彼女は母との二人暮らし。
小さな間取りの部屋が二つだけの都営団地に寄り添うように住んでいて、
決して楽な暮らしとはいえませんでした。

その彼女に、今度家に遊びに行ってもいいか、と尋ねました。
いい、と言うので、それから私は、のこのこお邪魔するようになりました。

私は当時、拓大生で、めちゃくちゃ男臭い世界に生きていました。
拓大から直行することもありました。
当然、下駄ばきに羽織袴です。

女二人の生活の場に、急に時代遅れのむさ苦しい男が現れたのです。
こんな男からの誘いを、よくもまぁ受けたなと思います。

お母さんもびっくりする様子もなく、にこにこ迎えてくれました。
夕食もたくさん作ってくれました。

当時の私は大食いでしたが、「男なんだから」と腹いっぱいになるほど
どんどん料理を出してくれました。

夏は大きなスイカをざっくりと半分に切って、
「はい」と渡します。
大胆な人でした。

すぐに家に泊まらせてもらうようになりました。
そればかりか、付き合い始めて間もないのに堂々と「入ります」と
彼女と二人で風呂に入ってしまいます。
私も大胆でした。

大胆すぎるほど大胆に、さも何年も前から住んでいるかのように、
平気でやっていました。

たった一人の娘なのにそれをすんなり許してくれたお母さんは、
とてもおおらかな人でした。

建武館 篠田剛

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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