『父子鷹』61

2011-01-22

生前、おやじは私に本を買ってくれました。
おやじから本をもらったのはこれが初めてでした。

それも20冊ほどまとめて。
私に読ませたい本を選んでくれたのでしょう。

しかし恥ずかしい話、私はこれまで読書の習慣はありませんでした。
ですので、しばらくは本棚に置いたままでした。

おやじが死んでから、ふと、
そういえばおやじが本を買ってくれたよな
と改めてずらりと並んだ本を眺めました。

すると、分厚い本が目に留まったのでした。
それは、『父子鷹』という、子母澤寛の小説でした。

読書の習慣のない私がこんな分厚い本を手にしたなんて、
私自身がびっくりです。
おやじが死んで恋しくて、“父子”という文字に惹かれたのでしょうか。

読書に縁遠い私が、その日から本を読むことにしました。

本は寝床で寝ころびながら読むもの、睡眠薬代わりに読むもの、
そう思っていました。

だから、2~3ページ読んでは眠たくなって、
しおりひもを挟んで眠ります。
こんなような感じが続きました。

どのくらい日数が経ったでしょうか。
やっと、ついに、分厚い本を読み終える日が来ました。
それが、ちょうど、おやじの命日だったのです。

建武館 篠田剛

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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