『曲がりそうな腕力をまっすぐに』 47

2011-01-13

組手が強くなれば皆いい人になれる、
というのはまちがいかもしれません。
もちろん辛い稽古で苦しみもがいて壁を乗り越えたことで、
自信がつくこともあります。

しかし人格者になれるかどうかは別物なのではないでしょうか。
変に自信がついて、
あくどい事だって平然としてしまう人間になりかねないからです。

だからこそ、言葉のサンドイッチが必要なのです。
トイレ掃除やボランティアが必要なのです。

指導員は、稽古の始めと終わりに、
人としての道について必ず一言そえます。
曲がりそうな腕力を、まっすぐにさせます。

たとえば、山を歩いて二つの坂に出くわしたら、
迷うことなく急なほうの男坂を選べ、とか、
饅頭が一つしかなければ半分に割って大きい方を渡すか、
俺は腹いっぱいだと丸ごとあげろ、…などです。

たわいない話ですが、子ども心に必ず焼き付いて、
そういう場面で話を思い出すものです。
そして人より辛い方、損な方を自分から進んで選ぶ癖がついてきます。

トイレ掃除もそうです。
窓ふきと便器ふきどちらを選ぶかといえば誰しも窓ふきです。
だけど、うんこを爪でコリコリほじくるのを経験すれば、
便所ふきもへいちゃらになります。

ちなみにうんこコリコリが何だかわからない方は、
空手のこころ4をご覧ください。

ボランティアは思いやりと物事の善悪を学びます。
子ども達に定期的にゴミ拾いをさせています。
ポイ捨てする大人の無責任な吸殻をひろわせます。
身勝手な人が多いことをわからせます。

このように、
ことばで補ったり、掃除で底辺のつらさを経験させたりしながら、
向日葵が陽に向かう如く真上から陽を注いで、
組手で強くなった腕力を曲がらぬようまっすぐ伸ばしてやるのです。

建武館 篠田剛

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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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