2012-03-10
大震災の発生から1年が経とうとしています。
これから、あのとき感じたことを思うままに書き記すことにしました。
大震災の日以来、あらゆる物事が自粛されました。
被災者の憔悴しきった顔を見れば、
呑気なことは言っていられなかったからです。
知人の親類に被災者がいるかもしれない。
そう思うと、自分たちだけが気楽な気分でいては申し訳なかったのです。
しかし大震災から3週間ほど過ぎたときから、
徐々に前向きなことばが聞かれるようになりました。
ようやく世の中が「負けない!」と言い始めたのです。
その頃です。
陸前高田市で女子高校生が一人、
海に向かってトランペットを吹いていました。
津波でお母さんを亡くし、その鎮魂として曲を捧げていたようです。
その曲はZARDの“負けないで”。
どんなに離れてても こころはそばにいるわ
今宵はわたくしと一緒におどりましょう
今もそんなあなたが好きよ 忘れないでね…
娘がお母さんに話しかけているのかもしれません。
いや、お母さんの優しく包みこむことばのようにも聞こえます。
なにが起きたって
ヘッチャラな顔して
どうにかなるサと
おどけてみせるの
負けないで
もうすこし
最後まで走りぬけて
追いかけてね
はるかな夢よ
「あなたは強い子。
もう、めそめそしないで前を向いて歩き出しなさい」
そうお母さんが言っているに違いありません。
人は悲しみを乗り越えて、強く生きていかなければなりません。
泣いてばかりいられない。
負けてたまるか。
悲しみを振り切って歩き始めたその姿は、いじらしくも逞しく見えました。
篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi 日本空手道建武館 館長
■板橋税務署の近くで目にとまる“ガマン売ります”のポスター。そう、建武館はガマンを標榜しています。
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※『時局放談』は、2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものです。したがって、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。