出棺前に体を拭いてあげます。
私はおやじの右手の中指の拳だこを、
最後にぐっと拭いてあげました。
おやじは49で死んじまいました。
敦盛に“人間五十年”とありますが、
まさに織田信長と同じ歳で逝ったのです。
太く短く。
しかし、おやじは心の中で生きている。
親父の人生を意気に感じた人の心にも生きているのです。
今、死なずにいれば、
どれほど我が息子を男の道にいざなってくれたことでしょう。
それを思うととても無念です。
私を愛してくれたおやじ、
尊敬するおやじがあっけなく死んだ。
限りある人生、というものを感じます。
私もおやじのように、
我が子のために尽瘁する覚悟をもった父親になりたいと思いました。
そして道場の子ども達に対しても同じ気持ちで接し、
空手という器で心を伝えたいと思うのです。
建武館 篠田剛
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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。