夜が明けて、祭壇に砂が供えられてありました。
その砂、おやじが好きだったあの海岸の砂でした。
どうして砂があるんだろう。
実はあの“大宴会”のあと、兄の友人小松悟君が、
千葉の勝浦まで夜通し車を飛ばして取りに行ったのでした。
人情の人です。
告別式の時も、焼香の順番が来た小松ちゃんが私に
「剛!」
と声を掛けました。
辛いだろうが気をしっかり持て、という檄だと思います。
絶対に泣くもんかと思っていた私は、
その一言で迂闊にも涙を流してしまいました。
建武館 篠田剛
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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。