『除夜のけり あきれた後輩の提案』 37

2010-12-31

大晦日の除夜の鐘。
除夜の鐘と聞いて思い出すのが、地元の本澤という後輩です。

「自分たちは煩悩のかたまりだから、
新年を迎える前に煩悩を取り去りましょう」

本澤がそう言ってきました。
何をするのかというと、
お互い下段回し蹴り(ローキック)を煩悩の数だけ蹴り合う、
というのです。

素足で太ももを蹴り合うのですから、これは痛い。
それを108回やろうというのですから、いやはや呆れた後輩です。

地元に板橋区立板橋第三中学校があります。
本澤が声をかけたのが道場生の中の、その卒業生。

本澤は一番下の後輩でした。
後輩に声を掛けられて“バカなこと考えるなよ”と思いながらも、
先輩として引き下がるわけにもいきません。

このようにして、自称「板三中空手部」が集合して、
“除夜の蹴り”が始まりました。

除夜の蹴りは、二列で互いに向かい合い、
館長の号令で一発ずつ蹴り合います。
10発交互に蹴ったらローテーション。
最後の8発は渾身の力を込めて…。

互いに、すさまじい形相になってやってました。

さぁ、煩悩がなくなって、これまた板三中卒の先輩が経営している
そばきり蕎肆由酔『浅野屋』に移って納会です。

通されたところは座敷。挨拶と乾杯は正座です。
パンパンに腫れた太もも。
苦笑いしながら冷や汗をかいて、ゆっくりゆっくり正座します。

煩悩は、まだまだ取り去られてはいなかったようです。

建武館 篠田剛

前のページ 次のページ

※『ひと・もの・こと』は、2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものです。したがって、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

お問い合わせ

無料体験・見学お申込み、お気軽にお問い合わせ下さい
  • 電話番号: 03-3962-4206
  • お問い合わせ