『新年会で最後の雄姿』 35

2010-12-13

会社の新年会は、板橋区立産文ホール、
現在のグリーンホールという所で行いました。
社員をはじめ、日頃お世話になっている方々や、
町内会の方々も招いて、和やかに行われました。

前半は表彰などの式典、後半は祝宴です。
祝宴の舞台では、余興でカラオケや踊り、
そして空手演武を披露するのが慣習でした。

親父はその演武で、試し割りをするという計画を立てていました。
周囲は当然、反対で、それは無茶ですと止めたようですが、
親父は頑として譲りませんでした。

演目は二つ。
一つは、角材を剣道のように振り下ろさせて、
上段受けといって前腕で角材を折るもの。
二つ目は、縦横30cm角ほどの杉板を、
確か5枚重ねて手刀で割るものでした。

羽織袴で登場した親父。
がりがりなので、
お腹に何枚もバスタオルを巻いて膨らませていました。

上に挙げて羽織から覗いた左前腕は、角材より遥かにか細かった。
振り下ろす角材の重みに筋肉が耐えられないからと、
右手を握って左前腕の下にあてがって支えた格好になって、
準備が整いました。

誰が見ても無茶な行動。
怪我だけでなく命を早めるかもしれない。
それを承知で、その覚悟をもって、
親父は臨んだとしか考えられませんでした。

親父は、これがおそらく最後の演武になるだろうと、
悟っていたのでしょう。

建武館 篠田剛

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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