『お前の風邪が移れば本望 家族の愛情』271 日本空手道建武館 篠田剛

2012-05-27

息子が以前、下痢や嘔吐を繰り返す、
感染性胃腸炎にかかったときの話しです。

この病気は下痢便や嘔吐物にウイルスがいて、
乾燥すると菌が宙に浮き、吸い込むと感染するそうです。

だからゴム手袋やマスクを着用して汚物を処理して、
ビニール袋に密封して捨てなければならないようです。

そういうことらしいよ、と知り得た情報を家族に話しました。
ところが、看病するお兄ちゃんは、
そんなことおかまいなしに寄り添っていました。
弟が吐いたゲロを素手で拭き取ってあげていました。

それから数日後…。
案の定、お兄ちゃんも吐き気がしてきはじめました。
弟の胃腸炎が移ってしまったのです。



そういえば息子たちに、おやじの話をしたことがありました。
それは、私が風邪をひいたときの、おやじとの会話のことです。

おやじに風邪が移るのを心配して、
「風邪うつっちゃうよ」と言ったときのおやじの言葉。

「お前の風邪が移れば本望だよ」

その言葉を聞いて、子供心にも親の愛情をめちゃくちゃ感じました。
風邪を移されて本望のはずがありません。
だけどおやじは本望という言葉でその愛情を表現しました。

風邪の菌だろうが何だろうが、
お前のすべてを受け入れるという不器用な愛情表現。
自分も風邪を引くとわかっていながら寄り添う犠牲的精神。

そういったものを、
子供ながらに感じましたね。

…もしかしたら、
お兄ちゃんはその話を覚えていたのかもしれません。

だから、ぐったり弱々しくもがいている弟をみて、
自分が移るとわかっていながら看病したのでしょうか。

胃腸炎になったのは弟への愛情の証し。
お兄ちゃんが病気になったのは可哀そうでしたが、
誇らしく頼もしくも思いました。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。
コラムは毎日発信していますので宜しければ明日もまた読んでみてください。

篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi 日本空手道建武館 館長
■道場生に伝えたい“技は心に応ず”“拳足は警策なり”。

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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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