『便所を素手で磨く』4 人生、カッコよく! 建武館 篠田剛

2010-10-23

掃除で誰もが一番やりたがらない場所がトイレ。
そのトイレを人間教育の場に使ったのが私の父でした。

父は合宿所のくみ取り式便所に我々子ども達を呼び集め、
何とあろうことか、
おもむろに手を伸ばし汚い便器を素手でこすり始めたのでした。

トイレの素手磨き修業のはじまりです。

大便の方が大変そうに思うでしょうが、
実は小便器のほうが始末に負えません。
小便はアンモニアがバクテリアで分解されたためか臭いが強烈で鼻につき、
また、尿石がこびりついてなかなか取れません。

父はその尿石や、乾燥して固まった糞を
指の爪でコリコリとほじくり始めました。

私たちはびっくり仰天。
目と目が合うと、のぞき込んでその指先に注目しました。
当然ながら父の爪の間に尿石やら糞やらが次第に詰まっていきました。

そんなことはお構いなしに父は平然とコリコリを続けていたのです。

ある程度の模範を示したあとに、
さあ、こんな感じだぞと言わんばかりに我々を見て、
手磨きを始めるよう促したのでした。

なぜトイレの素手磨きをさせたのか。
父からはその想いを聞く前に他界しましたのでわかりません。

しかしその体験で得たものは多く、
その良き伝統は今も受け継がれています。

2010-10-23

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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