『誠と龍真』 21

2011-04-16

私が辞任して、建武館の技術体系を直接打撃に切り替えて間もない頃。
この過渡期に、トップを巡ってしのぎを削っていたのが、
「誠」と「龍真」でした。

この二人はまさしくライバル、好敵手でした。
誠は温厚で優しく控えめな男の子で、
稽古も寡黙に忍耐強くやり、スピードと柔軟性が武器でした。
龍真は正反対に、元気で明るく、
技は荒削りだが力を漲らせながら稽古をして他を圧倒していました。

番付上で誠がトップ、龍真はナンバー2でした。
組手でも、龍真が“剛”で攻めるも、
誠はそれを“柔”でいなしていました。

辞任を境に、今まで当ててはいけないと教えていたのに、
当てなければならない、と180°変えました。
子ども達は大変戸惑ったでしょう。
私も手探りの状態で指導に迷いました。
私が迷っているものですから子ども達も迷うのは当然です。
子ども達は殴ったら殴り返し、怒ったり泣いたりと、
ひっちゃかめっちゃかでした。

この前後の出来事はまたいつかお話しします。

ある日、ついに起こるべきして起こった怪我をさせてしまいました。
上段突きも軽くならよいなどとしてしまい、
龍真の突きが誠の目に当たり、けがをさせてしまったのです。
誠は網膜剥離寸前となり、
このケガがもとで辞めることになってしまいました。
大切な逸材を私がけがを負わしてしまい、慚愧に堪えない思いでした。

けがを負わせることもさせることも、
指導者の教え方次第で起こりうる。
どちらも悲しい思いをさせてしまいます。
指導者として子どもの安全を徹底して守ることを、
肝に銘じた出来事でした。

龍真はその後も残ってくれて、
彼の元気と笑顔がとても励みになりました。

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篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi
日本空手道建武館 館長
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※『ひと・もの・こと』は、2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものです。したがって、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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