2011-04-15
組手の練習では防具を装着します。
それを子ども達に素早く装着させる癖をつけさせようとしました。
以前、試合で自分の出番がわからず名前をコールされて気づき、
慌てて装着することがあったからです。
動揺すればそれが試合に影響してしまいます。
避難訓練と同じで、普段から早く装着する癖をつけていれば、
万一の時も平常心で臨めます。
ですが、それだけの理由では自分のことしか考えられなくなります。
そこで「だらだらすると待っている仲間に迷惑がかかる」
だから早くしろ、と付け加えます。
そう説明したあとに、
「それでは今から1分以内につけます。よーい、始め!」
みんな一斉に慌てて防具をつけ始めました。
こういう、ヨーイドンで競争させると、
普通の子は我先にと急いでやるものです。
怒られたくない
いいカッコしたい
そんな気持ちが働くからでしょう。
そこで思い出されるのが「優也」です。
彼は幼稚園から習い、小学校の高学年になっていました。
早い子は30秒くらいでつけ終わったのに、
優也は1分を過ぎてもつけられませんでした。
なぜ優也が遅かったかというと、
実は慌ててもたもたしていた小さい子を手助けしていたからです。
優也は、自分のことは後回しにしてまで、
まずは小さい子の防具をつけてやっていたのでした。
当然、優也はびりっけつになりました。
しかし彼はそれでもおかまいなし、でした。
優也は中学、高校に進むと野球部に入ります。
そして後輩を思いやる彼の人柄が認められ、主将となりました。
いいカッコとカッコいいは、似て非なるものです。
後輩をとことん守るのが先輩の務め。
先輩は後輩を決して見捨てたりはしません。
たとえ自分が不利になろうとも、絶対に護り抜きます。
それがカッコいい先輩です。
優也は小学校高学年のときから、それができていたのです。
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篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi
日本空手道建武館 館長
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※『ひと・もの・こと』は、2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものです。したがって、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。