『パンチパーマの清掃活動』 19

自宅の鍵は掛けたことなどありませんでした。
誰もがいつでも出入りできました。少し変わった家です。私が学校から帰ると、家にいるのは兄の友達でした。まるで我が家のように勝手に上り込み、お菓子を食べながらテレビを見てくつろいでいます。

家の者よりも早く部屋にいる友達。それがごく当たり前の光景だったのです。私の友達も来るようになると、兄の友達を含め、毎日10人ぐらいはいつもいました。

高校生になるとバイクで来ます。兄の友達は自動車です。自宅前のガードレール沿いにはバイクと車がズラリと並びます。路上ではプカプカ煙草を吸い、周辺住民からすればまるで暴走族の集会所のようでした。

父の若かりし頃は暴れん坊でした。不良の気持ちがよくわかります。ですのでツッパリと呼ばれる若者の心を惹きつけるものを持っていました。

父の教育は非常識です。小学6年生の時、宴会の席でコップ酒を勧めるのです。私は調子に乗ってグイッと一気に飲み干しました。

そして中1になると今度は煙草です。箱から1本出して「吸うか?」というのです。さすがに煙草は、イイヨ!と断りましたが。もう少し大きくなったらキャバレーに連れて行ってやるからとも言ってました。

こんな父ですので、路上の煙草プカプカなど注意しません。
そのかわり。
人様に迷惑を掛けるな、と徹底して教えます。

兄の友達にコマッチャンと呼ばれる人がいます。父のお気に入りの人でした。私もその人によく遊んでもらい、影響を受けた人です。

コマッチャンは父の言葉を守り、帰る前は必ず吸殻を拾いました。それにつられて周りの友達も一緒に拾うようになりました。

パンチパーマのコワモテのお兄さん達が帰り際に清掃活動をします。
不健全と健全の、とてもアンバランスな光景が毎日繰りひろげられたのでした。

ちなみに当時コマッチャンは煙草は吸ってなかったですね。念の為。

建武館 篠田剛

2010-11-22

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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