『個人指導始まる』 16

高1の夏休み明け。
金城裕先生直々のマンツーマン指導が始まりました。

これほど名誉なことはありません。今、考えれば先生を独り占めできたことに感謝しています。金城先生から教えていただいた技と心は今も財産となっています。

筋肉の微細な使い方。頭のてっぺんから足のつま先まで神経を集中させながら動かなければなりません。はじめは形を真似るだけでも汗が吹き出ました。

稽古が終わるたびに兄の元に行き、
「握りこぶしは親指を人差し指にギュッと押し付けて握るんだ」
とか、その日に習った新しい技を、誇らしげに興奮気味に報告するのでした。

鍛眼法という独特な稽古法があります。
握りこぶしの代わりに手のひらで互いに額を狙って攻防します。

もちろん初心者の私はまるで歯が立ちません。当たり前のことです。しかし、私が稽古を積み20代前半の最も俊敏に体が動く時期でさえ、先生の額に触れることはできませんでした。

すべて軽くいなされてしまうのです。

先生は1919(大正8)年生まれですので私が20代前半ということは、先生は当時65~70歳でした。

よく、テレビなどで、どこかの大先生のエイッ!という掛け声で、弟子達がたちどころにウワッと倒されるシーンを見かけては嘘くさいと思うことがありますね。

何と言っても金城先生の凄さは理屈でなく実践で証明するところです。実際に先生と稽古しなければ信じがたいことでしょうが。

果たして私が70歳になっても、20代のイケイケの青年に一つも額に触れさせることなく応戦できるでしょうか。先生の若かりし頃、どれだけ強かったか。どれだけ厳しい稽古を積んできたか。

想像を絶するところです。

建武館 篠田剛

2010-11-19

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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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