『転機の日』 15

中学3年の時。
父が、私に会わせる人がいると言うのです。

約束の日。
自宅の和室、祖父が生前使っていた部屋でのことです。そこには父と、小柄な男性がいらしてました。私は緊張の面持ちで入るのでした。

その方の名は金城裕先生。

この時、私はこの方がどれだけ空手の大家なのかわかりませんでした。
少し前に父から、

 立ち話をする時も真正面に立たないんだ。
 少し斜向かいに立つんだ。
 心構えの面で、目前の人が急襲しても対処できるためだろう。
 日常でも心の用心を怠らない凄い人だ、と。

そう、人物紹介されたのは覚えています。父がこのように賛嘆して語るのは珍しい。
さらに「俺の親父みたいな方だ」と言うのです。

私からすると親父の親父はずっと上の人。
それだけでとても身の引き締まる思いでした。

この面談で金城先生より直々に、高校1年の9月より週2日、ご指導を仰ぐことが決まりました。

先生のご自宅は平塚市にあります。電車やバスを乗り継いで片道2時間かけて来られます。それも、私一人だけのために。空手家垂涎の的。とてつもなく贅沢で誇らしげなマンツーマン指導が始まるのです。

建武館 篠田剛

2010-11-18

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※この『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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