『木刀で留守番』 14

何年生だったか、小学生の時、独り留守番することになりました。

自宅屋上のプレハブ道場にお化けが出たとか楽しんでいる時はいいが、いざ一人となると自宅とはいえ薄気味悪いものです。まさか空手道場の家ですので泥棒は入らないでしょうが、父としても一人残すのは少し不安だったのでしょう。

そこで私に秘伝を授けます。

  剛、これを抱いて寝れば怖くない
  俺も小さい頃おじいちゃんに教わったんだ

そう言って、一本の短い木刀を渡してくれました。

家の人たちが出払って、いよいよ独りぼっちになりました。私は父の言う通り、短い木刀をお腹の上に縦に置いて、両手に抱いて眠るのでした。

薄暗い部屋で、なぜか以前映画で観た幽霊を思い出してしまい、背筋がピンと硬直してビビッてしまいました。

しかしいつもとは違い、その時は、この木刀とともに父の顔が目に浮かび、幽霊を吹き飛ばしてくれたのでした。

それからは、独りぼっちの時は木刀を抱いて眠れば怖くない。

そんな自信がつくようになりました。

少し大きくなって中学、高校の時、独り試験勉強をしなければならなくなった時でも-もちろん木刀を持たなくても- 独りぼっちは苦痛でなく平気でいられるようになりました。

大人になった今もこれから先も、世の中どうなるかわかりません。孤立無援ということが起こらないとは限りません。
しかし、この留守番体験はきっと活かされると思います。

残業で、深夜に帰宅しての“孤食”は、耐え難いものがありますが…。

建武館 篠田剛

2010-11-14

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※この『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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