『文庫本片手に物静かな子が優勝 和の心にふれよう 板橋区立常盤台小学校の総合学習』154

2011-11-22

体育館では空手のほかに、剣道となぎなたの講義も行われています。
それぞれに元気な子ども達がいますので、
気合いの声が飛び交ってそれはもう活気にあふれています。
それはそれでよいのですが、たまに大きな音がすると、
子ども達は音のする方へ向いてしまいます。

子ども達の気が散ってしまうこんなときに、
いつも持ち出すエピソードがあります。
ひと・もの・こと18に登場する里奈という女の子の話です。

私が若い頃、ある小学校の体育館をお借りして、
週1回空手の指導をしていたころのことです。
教えていたのは小学生が20名ほど。

夏のある日、終わりの礼をしようと正座したその時、
ゲリラ豪雨のような激しい雷雨が降ってきました。
雷の閃光や轟音で興奮した子ども達は、
終わりの礼も忘れて窓際へすっ飛んでいってしまいました。

やれやれと思って目を戻すと、
そこには一人、興奮もうろたえもしない女の子がいました。
終わりの礼のときのまま、しっかり正座で待っていたのでした。
その女の子が、さきほどご紹介した里奈でした。

里奈はいつも文庫本を持ち歩き、
時間があれば一人で読むという物静かな子でした。
空手のときもあまり目立つ子ではありませんでした。
万能な運動神経も持ち合わせていなかったと記憶しています。

だけど常に真剣。
試合に出ては負けが続いていましたが、
しかし6年生最後の試合で優勝することができました。

里奈はほかの誰よりも集中力がありました。
どんなときも気を抜かず、
場に流されず一生懸命やる芯の強さを持っていました。
それゆえに、自分で最後と決めた試合で、
念願の初優勝を手繰り寄せることができたのだと思います。

一度やり出したら、ほかのことに心を奪われず、
一心不乱に物事を進めてほしい。
そうすれば、きっと何事もよい結果が出る。
こんな思いから、私はいつも子ども達に、
里奈の思い出話を引き合いに出しているのです。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。
コラムは毎日書いていますので、よろしければ明日もまた読んでみてください。
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篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi 日本空手道建武館 館長
財団法人日本体育協会公認上級指導員
介護予防サポーター こころの健康サポーター
板橋区にある地元密着の空手道場で“ガマンを売る空手家”
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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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