人間の人柄というのは、誰もいないときに垣間見られるものだ。
小山の魅力も、まさにその時だ。
ゴールデンウィークの道場はお休みだった。
小山は一人で練習をしていた。
一頻り練習を終えると、小山は掃除機がけを始めた。
しかしそれで終わらず、今度は雑巾がけまで黙々と始めた。
人は偉くなると掃除をしなくなる。
目下の人間に任せて偉ぶる。
ところが小山はチャンピオンになっても偉ぶることはなかった。
学生のころからそれはまったく変わらない。
小山の練習風景を見たことがあるか。それは過酷を極める。
これ以上できないというところまで自分を追い込んでいる。
だから、練習直後の小山の神経はピリピリしている。
近寄るとサッとナイフで切られるのではないかと思うほどだ。
普段の小山とはまるで別人のようになる。
このスイッチが小山の強さであり、魅力のひとつでもある。
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篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi
日本空手道建武館 館長
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