ボロボロに破れた羽織袴。
そして高下駄がカランコロンと鳴り響く。
時代遅れの異様な格好で町内を歩く私の姿を見て、
ご近所は、さぞ迷惑な思いをしているんだろうなと思いました。
何か償いをしようと思っていました。
そんなある日の晩、拓大の帰り道。
町内の道路の真ん中で、酔って寝ている男性を見かけました。
たぶん町内の人だろう。
そう思った私は、その男性を背負って家まで連れて行くことにしました。
羽織袴の男が男性をおぶって歩く姿は何とも異様だったでしょうね。
酔いながらも、次は右、左、と聞いてたどり着いたのが、
なんと実家のすぐ近くの家でした。
私はご近所に迷惑をかけている分、
努めて人の為に何かしようと思っていました。
自分の得にならなくても徳を積もう、そう考えていました。
ちなみにその男性、そうとう泥酔していたのでしょう。
おんぶして少し歩いていたら、背中に生温かさが伝わりました。
途中で小便をしてしまったのでした。
羽織がびしょびしょになりながら、
それでも何か、晴れがましい気持ちで歩いていましたね。
建武館 篠田剛
前のページ 次のページ
※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。