『警視総監のお話、そして山口さんからのお手紙』71

2011-06-20

当時の警視総監、伊藤哲朗さんからも、
つぎのようにお答えいただきました。

警察官の命懸けの任務と人命尊重とは時として矛盾しますが、矛盾を抱えたまま行動せねばならない時もあるわけです。指揮官として殉職させないようにするのですが、それを恐れているようでは何もできません。矛盾がはらんでいますが矛盾が解決するまで動かないということでは物事は進みません。矛盾は矛盾のままいくしかないという場面もあるのです。

本の著者、山口秀範さんはこの本で次のように語っています。

身の危険をおかしてでも、覚悟をもって臨まなくてはならないことがある。幼い兄妹の親御さんが発してくれた質問によって、勇気、覚悟、自己犠牲という、ふだん親しむことのない言葉が、この会場を埋めた人々の心の奥底に沁み通っていくのが肌で感じられました。

まじめや愚直さを、何かおしゃれでない、ドンクサイことのように考える風潮があります。地道に努力し続ける人を要領の悪いやつと見くだしたり、本気になって物事に取り組む姿勢を嗤ったり、不正を許さない潔癖さを「青くさい」と小バカにしたり、「立派」であろうとすることが現代的・都会的ではないように思う空気が濃厚に広がっているのを感じるのは私だけではないはずです。
そんな今こそ、宮本さんの誠心誠意を尽くす生き方を、子供だけでなく、大人にも伝えたい。悩みがあって一歩踏み出せずにいる子供たちに宮本さんの優しさと勇気を感じてほしい。
かすり傷ひとつ負いたくない世の中に、宮本さんは錐(きり)のように鋭い穴を開けたのです。
宮本さんは亡くなりました。しかし、その魂は多くの日本人に宿っています。そして、これからも「第二、第三の宮本さん」は続々と現れる。私たちが日本人であり続ける限りは……。


その後、しばらくして山口さんからお手紙が届きました。
それによると山口さんは学生時代に、
体育会の空手部に一年在籍して日々稽古に明け暮れたそうです。
考え方しかり、空手しかり、たった一度しかお会いしていませんが、
とても身近な存在となりました。

山口さんはその手紙の最後に
「本当の勇気と優しさをしっかり伝えてください」とメッセージを添えてくれました。

私は、使命と覚悟を改めて感じつつ、
わかりました。と、心で答えました。

株式会社寺子屋モデル

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篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi
日本空手道建武館 館長
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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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