2011-01-25
高歩院での話。
禅と書の体験が終わり、
老いたご婦人が玄関まで見送りに来られました。
気品ある方でしたので、
おそらく大森曹玄氏の奥様だったのでしょう。
奥野雅己先輩は、玄関口でご夫人と会話されました。
ご夫人が腰の調子が悪いというと、
先輩は自分に整体の心得があることを告げ、
ご夫人を抱き抱えてギュッと持ち上げて“治療”をし始めました。
ここら辺が先輩の大胆なところで、
行動力とバイタリティはずば抜けていました。
ご夫人は大男に思い切り抱きかかえられたのですから、
苦痛だったに違いありません。
一瞬、うっと唸りました。
しかし、床に下ろされたご夫人は、動じた様子も見せず、
何事もなかったかのように平然と振る舞われていました。
その気丈さに並はずれたものを感じました。
その後私は、何度かこの高歩院に一人で足を運びました。
ある日ご夫人より、読んでみてくださいと、
昭和42年から、当時までに発行の「鉄舟」という冊子を、
何十冊もいただくことができました。
奥野さんに誘われた私は、
貴重な体験をさせてもらいました。
それにしても、
拓大の拓禅会、
おやじからもらった大森曹玄著「山岡鉄舟」、
そして奥野さんに誘われた高歩院。
縁とは確かにつながっているのだと、
実感せざるを得ませんでした。
建武館 篠田剛
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※『おれの半生』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。