『道場が禅寺 4』 8

2010-11-03

去る10月23、24日。
子ども達をカッコいい大人にさせるために企画した道場“修行”合宿。
どんな内容だったのでしょうか。

たとえば食事。
目上の人が箸をつけるまで食べてはいけません。
上下の秩序、規律を教えます。
夕食は白米とけんちん汁、
朝食はお粥と昆布の佃煮、梅干、たくあんという質素なものにしました。
鍋の米粒さえ一粒も残しません。
お茶を注いでこそげてみんなで飲んで“しまつ”します。
各自のお椀もお茶を注いぎたくあんで洗って飲み干します。
食べ残しを躊躇いなく捨てる昨今、
質素な食事でものの有難みとしまつの大切さを学ばせました。

たとえば入浴。
といっても道場の小さなシャワー室ですが。
上級生と下級生のペアで入らせ、年下の面倒をみさせます。
今の子どもは深い人間関係を避けたがります。
結果、信頼して心を通わせる友がいないのです。
まさにお風呂は“裸の付き合い”。
自分をさらけ出す勇気と、上下のけじめを芽生えさせようとしました。

たとえば起床。
朝5時ぴったりに、
予め決めておいた起床係の子の合図「起床ーッ!」で飛び起きて即正座。
みんな一斉に「おはようございます!」と元気に挨拶させます。
眠いからもうちょっと…は許しません!
甘えやわがままな心を引きずらずビシッと断ち切る自律心を身につかせました。

たとえばゴミ拾い。
朝稽古ランニングのあと近くの公園でゴミ拾いをしました。
もちろん奉仕の精神を養わせるためですが、
ポイ捨ての身勝手さをわからせるためでもあります。
また、偶然ですが子どもが50円玉を拾いました。
落ちてるものは自分のじゃないという当たり前なことを教えるちょうど良い教材だ。
遠回りしてゴミ拾いしながら交番に届出させました。

たとえば30分正座ガマン。
終わりまでピクリとも動かないでいられるか?
みんなでやってみました。
ガマンを知らない人は、自分を追い詰めることができません。
ここぞという時に踏ん張れません。
自分に甘いのです。
欲しいものが何でも手に入る世の中、
だからこそガマンできる子にしたいと合宿で正座ガマンをさせました。

たとえば街頭チラシ配り。
商店街沿いの駅前で道場のチラシを配りました。
“普段は優美なキャビンアテンダントも事故があれば大声で乗客を誘導する。
それがプロ。おとなしい性格でもやらざるを得ない”。
ある記事を読んで大声を出すことも合宿に取り入れようと決めました。
また、受け取ってくれないと侮辱されたようで落ち込むけど
やり続ける心のタフさを経験させることも、チラシ配りの目的の一つとしました。

合宿の締めくくりにリーダーシップとは何か?の勉強会をしました。
みんな思い思いのリーダーシップ像を話してくれました。
人の上に立つ人は知識や技能よりも人柄が大事です。
自分は後回しで後輩のため部下のため、
世のため人のために尽くす人になってもらいたい。

梅干がきらい、という子も泣く泣く食べてがんばりました。
たくあんをポリポリ音を出さないようゆっくり噛む顔がこっけいで愉快でした。
厳しい中に楽しさを見い出す。心の強い人ならできます。

この合宿で、子ども達が一回り大きく成長してくれたならば
指導者冥利に尽きるというものです。

建武館 篠田 剛

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※『ひと・もの・こと』は、2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものです。したがって、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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