『和の心 常盤台小学校』 34

2010-11-04

ときわ台タイム。
それは、地域に住む方々とかかわりながら、
日本や他の国の文化や伝統に親しむ体験を楽しもう、
という素晴らしい活動です。

日本舞踊、琴、華道、茶道、剣道、囲碁をはじめ、
英語、中国語、インド舞踊そして手話ダンス、切り絵と多彩。
地域の方々が先生となって誠心に、
児童に日本や他の国の文化に触れさせ、
それぞれの違いや良さを感じ取らせます。

本部道場とコナミスポーツクラブ大山で指導している道場生が、
この常盤台小学校にいます。
その子らの要望もあり、また趣旨に共感したので、
この体験学習にボランティア協力することになりました。
10月14日を皮切りに週1回のペースで4週にわたり、
4年生の子ども達に空手を教えます。

ところで、この常盤台小学校の程近くに、
2007年2月に東上線ときわ台駅で殉職した、
宮本警部が勤務していた交番があります。
そこで私が思いついたのは、宮本警部が遺したもの、
すなわち、「誠・勇気」を育ませるのにぴったりの学校であり、
それを講義の主軸にするということです。

空手でそれを伝えるには?
空手に限らずスポーツは、ルールの中で、
相手が嫌がることをやる、相手の得意技を阻止するといった、
ある意味モラルに反する行動をとるものです。
ましてや空手は殴り合うのです。

それゆえに子ども達には、技の鍛錬はもちろんですが、
それ以上に心の充実を求めてもらいたいのです。
心なき技は無に等しい、とさえいわれます。

私の内心は、この体験学習を引き受けたものの、不安でした。
技は何となく身につけられるが、果たしてその心までも、
たった4回の講義だけで教えることができるのか。

「殴られる、蹴られる痛みや苦しみ」こそ味わってもらいたいのですが、
4回だけですので、
「殴る、蹴る楽しさ」だけ覚えて時間切れとなってしまいます。
しかし、いつか技は忘れても、
私が指導の合間、合間に話した人としての道の話は、
必ず子ども達の記憶に残ります。
やがて成長した彼らは、
いろんな経験を積み重ねながらその話を思い出し、
ああ、こういう意味だったのかと理解することでしょう。

理解できたその瞬間、私は、
殴る蹴るの野蛮な空手は正義の振る舞いに変わると信じています。

損をしてでも正しいことをする。
災いの矛先が我が身に転じて火の粉を被ろうが弱者をかばう。
真面目や愚直を恥ずかしがらず周りの目に負けずに貫く。
そんな人こそが認められる国になってほしい。
今の子ども達がそういった価値観を学んで大人になれば、
将来の日本は必ずそんな国になるでしょう。

今日が体験学習の最終日です。
4日間の集大成として同級生や保護者の前で発表会をします。
基本技、ミット打ち、最後に板割りを披露する予定です。
恥ずかしがらず元気に、失敗してもくさらずに。

この体験学習が、
子ども達にとってカッコいい人生を歩む糧となりますように。

建武館 篠田剛

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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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