2012-06-19
橋本龍太郎は人物だった。
野口さんが誠意の人だと知ると一転、味方になった。
実は橋本氏が総隊長を務める登山隊がエベレストに登頂したとき、
酸素ボンベを捨てていました。
山岳会のドンであり総理大臣でもある橋本氏としては、
酸素ボンベを見つけられては甚だ困る。
そこで清掃登山に行かせないように手紙で圧力をかけたのでした。
そうだと思った野口さんはまたもや闘争心に火がつきました。
よし!ということでエベレストに登って、
本当に見つけてきてしまいました。
帰国すると橋本氏の事務所に行って、何食わぬ顔をして
「あのう、先生の忘れ物を持ってきました」
と言って、捨てた酸素ボンベを差し出すわけです。
これでは総理として面目丸つぶれ。
さすがの橋本氏も無礼な奴だと思ったことでしょう。
ところが橋本氏、立ち上がって丁重に
「確かにこれはわが隊のゴミです、参りました」
これが縁となって二人は親交を深めます。
それからは、山岳会などから批判の的になっていた野口さんを、
橋本氏は盾になってくれました。
「わが隊が捨てたゴミを野口君が拾ってきてくれた」と、
方々で言ってくれたそうです。
ところがそのゴミ捨て発言がもとで、
今度は世間が橋本氏へ抗議が殺到します。
しかし橋本氏はその後もずっと、
野口さんをかばい続けてくれたのでした。
野口さんの大胆な行動力。
体制の大将にもひるまなかった肝と純真な信念。
出る杭は打たれる。
だけど打たれて出る杭に感じ入った橋本氏。
そういう人物が揃って、
体制とか時代というものが動くんでしょうね。
野口健公式ウェブサイトより
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篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi 日本空手道建武館 館長
■板橋税務署の近くで目にとまる“ガマン売ります”のポスター。そう、建武館はガマンを標榜しています。今、必要なのは弱者へのやさしさです。損をしても正しいことをする正義感です。
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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。