『1人1個で30万個 富士清掃登山』313 日本空手道建武館 篠田剛

2012-06-20

野口健さんのお話をこのコラムで続けています。
彼の支援者でも回し者でもない私が、
なぜお話ししているかというと彼の反骨精神を知ったからです。

権威に面と向かって諫言するなんて、なかなかできませんよね。
ましてや、いわばケンカをふっかけたも同然の橋本龍太郎を、
一番の理解者にさせたのです。
総理大臣を味方に付けるだけの魅力を持っている人間なんだと、
だから関心を持ったのです。

野口さんは橋本龍太郎を強力な後ろ盾にして、
富士清掃登山を推し進めます。

では、そもそもなぜ富士清掃登山をしようとしたのでしょう。
それは…

野口さんがエベレストに登ったら日本のゴミがいっぱいあったこと。
ヨーロッパ登山隊が
「日本人はヒマラヤをマウントフジにするのか」と言っていたこと。
世界で最も有名な登山家メスナーが
「世界でもっとも汚いのはマウントフジ」と述べたこと。
試しに樹海に行ったら注射器や化学薬品などが、
びっくりするほど不法投棄されていたこと。
富士山ならみんな関心を持って報道してくれると考えたこと。

そんなところから、富士清掃登山を思いついたのでしょう。
ところが人々はなかなか思うように関心を持ってくれません。
国が動くのを待っていたら時間がかかります。

ならば、自分ができることを考えよう。
ということで、まずは毎日新聞の紙面で、
汚れていることをPRしました。

するとコーヒーのコマーシャルで抜擢されて、
清掃登山をテレビでアピールに成功。
そして関心を持ったマスコミを連れて樹海に行って、
なるほどと思わせました。

とてもバイタリティ。行動力の持ち主です。
これで一気に富士清掃登山を打ち出したのでした。

ところが最初の頃は拾っても拾っても次の日はゴミがいっぱい。
年間30万人もの登山者がいるわけですから無理もありません。
「やっても意味ないか…」と思い始めました。
まずは3年やってみよう。
3年たってもまったく変わらなかったらやめようと決めました。

すると、思いが伝わったのか年々参加者が増えました。
おもしろいことに、参加者が多すぎて
「ゴミがない」とクレームも出ることも。

ここ数年、普通の登山者がゴミを持ち帰る姿が多くなったのは、
野口さんのPRのおかげでしょう。

野口さんは言います。
「30万人いるということは、1人1個で30万個。汚れるのも早いがきれいになるのも早い。」

一人の人間がこれだけ多くの人の心を動かしました。
たった一度の人生、やってやる!の気持ちでトライしようぜと、
背中を押された心地です。

最後まで読んで頂いてありがとうございました。
コラムは毎日発信していますので宜しければ明日もまた読んでみてください。

篠田 剛 SHINODA Tsuyoshi 日本空手道建武館 館長
■道場生に伝えたい“技は心に応ず”“拳足は警策なり”。

前のページ 次のページ

※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

お問い合わせ

無料体験・見学お申込み、お気軽にお問い合わせ下さい
  • 電話番号: 03-3962-4206
  • お問い合わせ