『私の兄、そして建武館のはじまり』 1

2010-09-28

昭和57年、兄が大学2年の時に父親が病死。父は事業をしていましたが当時で数億という莫大な借金を抱えていました。好むと好まざるとにかかわらず事業を引き継がざるを得ずという状況でした。

待ち受けていたのは、抱えた借金をどう返済するかという厳しい現実でした。しかしそれよりも辛かったのはリストラの断行や幹部の裏切り。それは、人間不信に陥るほどの辛い経験でした。

会社と同時に兄は道場も継承しました。当時はいわゆる伝統派の空手でした。ここには学ぶべきものがたくさんありましたが、兄は追い求める何かを夢中で探していました。

そんなある日、知人の紹介でキックボクシング小国ジムの斉藤会長と出会います。激しい練習風景を目の当たりにして、これはキックを避けて通るわけにはいかない。そう。キックへの挑戦のはじまりです。

キックは立ち技の中では最強だ。その最強の技でもって打たれれば痛みは強烈である。その痛みを感じることで沸き起こる、攻撃されることの恐怖心。これを克服すること、つまり自分の弱い心と戦うことが大事なのではないか。

兄は事業継承で学んだ、どんな厳しい状況でも逃げずに立ち向かう心の大事さ。これを学ぶために、また、人間を作る手段として、ならばキックボクシングの技を取り入れよう。

このようにして建武館空手が生まれました。ここが建武館空手は空手であって空手ではなく人生修業のための空手である所以です。兄は自らの手で一から道場を作り、心通うメンバーと共に生きようと決心したのです。

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※『空手のこころ』は2010年9月~2012年9月にマイベストプロ東京で公開した『館長コラム』を転載したものですので、掲載している記述は執筆時点のものであり現況とは異なることもあります。

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